関係者支援ユニットの声〜赤津玲子ユニット長〜
「最新の声」では、各ユニットにおけるこれまでの活動状況をお知らせいたします。
1.はじめに
本ユニットの研究は、システムズアプローチユニットと共通の課題を有しています。社会的孤立状態にある不登校やひきこもり、介護や虐待などに対する関係者支援の中から、間接的アセスメント、オープンダイアログの可能性について検討することを目的としています。
2022年度は、間接的アセスメントの予備調査研究やオープンダイアログ研究会を実施しました。
間接的アセスメントとは、不登校やひきこもりの子どもを持つ親や介護、虐待に関わる支援者の方の支援、いわゆる支援者支援のイメージです。直接来談した人をアセスメントするのではなく、家庭での現状はどうなっているのか、子どもと親の関係性などをアセスメントしていきます。
オープンダイアログとは、フィンランドではじまった取り組みで、本人と関係者が一同に会して、本人が抱える問題については話し合っていくというアプローチ方法で、精神医学の分野で発展したものです。このアプローチを他の領域にも活用できないかと考えています。
2.調査研究の実施
現在、間接的アセスメントの予備調査研究とオープンダイアログ研究会を実施しています。
(1)間接的アセスメントの予備調査研究
まず、間接的アセスメントについて意見を求め、その結果を、KJ法1 にて分析しました。8月1日(月)20:00~21:30にユニット内の会議を兼ねて研究会を実施、事前に配布していたKJ法の結果をもとに、ディスカッションを実施しました。
(2)オープンダイアログ研究会
2022年12月17日(土)9:30~13:00に龍谷大学大宮学舎清風館3階共同研究室にて、当センターシステムズアプローチユニットとの共催で研究会を実施しました。コメンテーターには、植村太郎氏(神戸労災病院精神科部長)を迎えました。実際のひきこもり事例をもとに、オープンダイアログを実施、支援者側に家族療法家、ひきこもり支援センター担当者役、ケースワーカー役を、他のユニットメンバーが両親役、本人役、美容師や教習所職員の役を演じてもらいました。
オープンダイアログ研究会へは、大学院生に参加してもらい、支援を学んでもらっています。参加した大学院生からはコメントを集め、学びの効果の検証を行います。
これらの結果は、実践報告として投稿予定です。
3.研究成果物
当センター設立後に公表した論文等は以下の通りです(2022年12月20日現在)。
(1)2022年度人間・科学・宗教総合研究センター研究紀要への投稿
①田上貢、吉川悟「学校の中でスクールカウンセラーが機能するための有効な視点-教育現場の連携に関する一考察-」
②赤津玲子、高林学、上野温子、中島陽太、髙井恵、田上貢「システムズアプローチによる間接的アセスメントに関する予備調査研究」
(2)書籍
黒沢幸子、赤津玲子、木場律志編著『思春期のブリーフセラピー』日本評論社
(3)学会報告
①赤津玲子、黒沢幸子、木場律志、井上滉太、伊藤秀章、田上貢「思春期×システムズアプローチ」第39回日本家族療法学会淡路島大会(2022年9月16~17日)※自主シンポジウム
②高林学「家族のかたちをこどもが家族に問いかけた一事例」第39回日本家族療法学会淡路島大会(2022年9月16~17日)※事例検討
③中島陽太「知的水準と適応行動水準にディスクレパンシーが見られた中学生の症例」第32回洛和会ヘルスケア学会総会(2022年10月23日)
④中島陽太、武田俊信、前田真治「現実感のなさと周囲の共感性の得られなさに悩む、Sluggish cognitive tempoの症状が疑われた成人の女性の学会:第63回日本児童青年精神医学会総会(2022年11月10~12日)※症例報告
⑤Youta Nakashima, Toshinobu Takeda, Atushi Kubomi
演題:A LIFE WEARING 3D GLASSES: THE CASE OF A WOMAN WITH SLUGGISH COGNITIVE T EMPO. The 25th World Congress of The International Association for Child and Adolescent Psychiatry and Allied Professions (2022年12月5日~9日)
4. おわりに
引き続き、間接的アセスメントのインタビュー調査、関係者支援のシンポジウムの実施、オープンダイアログ研究会の継続等を行っていく予定です。
補注:
1 川喜田二郎によって紹介された質的統合法をいう。膨大な情報や断片的な情報を効率的に整理する目的で使用される方法である。詳細は東大IPCウェブサイト参照。