SIRC 龍谷大学 社会的孤立回復支援研究センター | Social Isolation Recovery Supports Research Center, Ryukoku University

Voices最新の声

グリーフサポートユニットの声〜黒川雅代子センター長〜

「最新の声」では、各ユニットにおけるこれまでの活動状況をお知らせいたします。

黒川雅代子教授(短期大学部)
1.はじめに

 当ユニットでは、主に「若者の自死自殺対策」と「遺族支援のためのネットワーク構築」を研究課題としています。

 

2.研究課題の背景・目的
(1)若者の自死自殺対策

 コロナ禍で、若年層や女性の自殺の増加が指摘されています。

 大学の多い地域、京都であるから、若者の自死自殺対策について行政機関と連携し、検討していくことが必要であるという考えから、京都府自死自殺対策カレッジ会議への学生参加者を募り、大学の中でも学生の孤立を防ぐための方法について、学生目線で考える土壌の形成に努めることを、本研究の目的としています。

(2)遺族支援のためのネットワーク構築

 新型コロナウイルス感染症による死は、遺族から看取りや葬儀、その後のインフォーマルなサポートも奪いました。当初は、特に未知のウイルスによる恐怖が過剰反応し、感染者に対する偏見・差別が強く、尊厳ある死や死別が保障されていませんでした。それにより、遺族は、社会的な距離や隔離、偏見・差別により孤立しました。

 街ににぎわいが戻っても、大切な人を亡くした遺族にとっては、解決していない現状があり、乖離が生じているのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症で大切な人を亡くした人への支援は、これから必要になってくると考えています。

 

3.活動について
(1)若者の自死自殺対策

 若者の自死・自殺について、学生自身が考える土壌を構築することを目指し、本学の学生に「京都府自死自殺対策カレッジ会議」への参加呼びかけを行っています。具体的には、2022年10月にチラシを掲示、当センターホームページ等を通して募集、合計10名の応募がありました(2023年5月現在)。2022年11月には龍大版カレッジ会議を設立、月に1度のペースで会議を行っています。

 2023年2月、龍大版カレッジ会議は、「龍谷オープンコミュニティ(ROC)」と名称を新たにし、同月本学学生を対象に学生生活の実態を把握するため、アンケート調査を行いました。また、調査結果を分析した結果を大学ポータルサイトにて公開しました。続く3月には「京都府自死対策カレッジ会議」参加大学の学生と行政機関ともに、『京都いのちの日』をイオンモール京都で開催しました。

(2)遺族支援のためのネットワーク構築

 現在は、新型コロナウイルス感染症で亡くなった人の遺族への支援活動を重点的に実施しています。

 2023年3月11日、「新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方の追悼会」を西本願寺阿弥陀堂にて開催しました。

 5月7日には、「新型コロナウイルス感染症 忘れないで!亡くなった人のことを〜Withコロナ 誰もが悲しみを語れる社会へ〜」講演会および討論会を、龍谷大学アバンティ響都ホールにおいて開催しました。第1部講演会では、ノンフィクション作家・評論家の柳田邦男氏が「人権としての死と別れ〜コロナ時代の人間の尊厳を問う〜」をテーマに登壇し、新型コロナ対応の問題点に人権の観点から切り込みました。第2部討論会では、柳田氏をはじめ新型コロナウイルス感染症で大切な人を亡くした遺族や医師など多様な立場から新型コロナと向き合ってきた登壇者らを交え、「感染症5類引き下げ前日に語る Withコロナ 誰もが悲しみを語れる社会へ」をテーマに話し合いました。

(3)研究発表

 黒川雅代子「コロナ禍における遺族支援」『仏教・親鸞浄土教を機軸とした宗教実践と社会実践の研究』(方丈堂出版、2023年)

 黒川雅代子「新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方の遺族支援」日本グリーフ&ビリーブメント研究3号(2022年)

 

4.おわりに

 龍谷大学社会的孤立回復支援研究センターを通じて、自死自殺や遺族支援について、組織的、実践的に活動及研究を今後も進めていきたいと考えています。